立山博物館とは
About
ごあいさつ
立山、それは単に大地に聳(そび)えたつだけでなく、天と地を繋ぎ、それ故に古来、精神性を付与された山でした。その精神世界は、「立山曼荼羅」と呼ばれる絵画に集約されています。富山県の精神的シンボルであり、日本人の思想形成に大きな役割を担った立山を対象に、その雄大な自然とそれに育まれた立山信仰の精神世界を紹介している施設、それが「立山博物館」です。
富山県[立山博物館]は平成3年(1991)11月1日、かつての立山信仰の拠点集落の一つであり、現在も歴史的遺構や景観、資料を残す富山県立山町芦峅寺に開館しました。「人間と自然とのかかわり方」をテーマに掲げ、常設展示と、年二回の特別展示で様々な切り口から立山の魅力を紹介する展示館、映像資料で立山の自然と「立山曼荼羅」の奥深さが実感できる映像ホール遙望館、「立山曼荼羅」の世界をオブジェやアート等で体感するまんだら遊苑の三施設を中心に立山の魅力を発信しています。
さらに、13ヘクタールの敷地に、かつての景観をしのばせる「宿坊」や「布橋」・「うば堂基壇」などの復元施設を含めた11施設を有し、それぞれがつながりを持ちながら立山の歴史や文化を味わっていただける、広域分散型の施設となっています。
立山博物館の見どころは、単に展示館の展示物を観覧するにとどまらず、地域の歴史的空間の散策などを通して、霊山立山を人それぞれに感じていただけるところにあります。お時間が許すかぎり、時間をかけてゆっくり散策し「癒し」の時間を満喫していただければ幸いです。
富山県[立山博物館]
館長 岡田 知己
コンセプト
当館の基本コンセプトは、古来、日常界を超えた「聖なる山」として仰がれ、親しまれてきた「立山」について、その知識と理解を深め、「立山」との触れ合いを通して心の浄化を求めた先人の生き方を追体験し、「人間と自然とのかかわり方」を学ぶ拠点とすることです。
「立山」の自然、歴史、文化などに係る様々な資料を収集・保管し、総合的に調査研究を行うととともに、これらの資料並びに研究成果を広く県内はもとより国内外の人々に展示・紹介することで、教育、研究、レクリエーションなどの利用に供することを目的としています。
沿革
富山県[立山博物館]は平成3年(1991)11月1日、かつて立山信仰の拠点集落であった立山山麓の芦峅寺に開館した、富山県で最初の県立総合博物館です。
当館は、昭和47年(1972)に作られた「富山県立山風土記の丘」を拡充・再構築し、新たな構想のもと設置されました。その始まりには「古文書や曼荼羅など立山信仰に関するあらゆる史料を展示する歴史民俗博物館の新設と宿坊群の景観保全」を盛り込んだ「立山風土記の丘の整備計画案」の提言があります。それをもとに策定した『富山県立山博物館基本構想』を礎にして、翌昭和63年(1988)から基本計画の検討と建設が進められました。
「富山県立山風土記の丘」は、文化庁の「歴史公園風土記の丘整備計画」に基づいて全国で整備した施設の一つです。富山県では立山町芦峅寺地区を「立山信仰の拠点集落」として整備し、昭和45年(1970)から資料館の新築や布橋の再建、県内の古民家の移築を行いました。現在、当館では博物館として新たに整備された展示館、遙望館、まんだら遊苑、山岳集古未来館などの施設の他、教算坊、布橋や嶋家、有馬家、合掌休憩舎、かもしか園など「立山風土記の丘」から引き継いだ様々な関連施設を含めて立山博物館として公開しています。
全国でも珍しい広域分散型の博物館 ここにしかない「場」の力〈教界〉〈聖界〉〈遊界〉
立山博物館では、かつて立山信仰の拠点集落であった芦峅寺地区に立地するメリットを最大限に生かすため、当初から広域分散型の博物館として計画、整備を行ってきました。
「芦峅寺地区全体を一つの博物館」と考え、メイン施設である展示館、旧宿坊建築の教算坊、そして平成25年(2013)新たに開館した山岳集古未来館のある一帯を学習エリア〈教界〉。映像ホールの遙望館、布橋、うば堂基壇、芦峅寺の宗教施設「閻魔堂」、石仏群一帯を体験エリア〈聖界〉。そして、立山曼荼羅の世界を立体で表現した施設として平成7年(1995)7月に開苑した大型野外施設のまんだら遊苑や、風土記の丘の時代から引き継いだ関連施設を散策しながら楽しめるレクリエーションエリア〈遊界〉。これらの3つのエリアが芦峅寺地区の中心部にバランスよく分散し、全体を回遊しながら学び、体験し、楽しむといった博物館の役割を味わっていただけるロケーションとして作られました。
建築について
- 磯崎新氏
展示館と遙望館は、「ポストモダン建築の旗手」と評された磯崎新氏のデザインです。
展示館の内部は頂部トップライトから光が降り注ぎ、外壁には瓦風煉瓦タイルが用いられ、周囲の景観と調和しています。
遙望館では大型3面マルチスクリーンによる迫力ある映像が上映され、終了後にはスクリーンが上がって立山の絶景が眼前に広がります。
- 六角鬼丈氏
まんだら遊苑の野外施設は、五感を働かせて立山曼荼羅の世界を体験する施設として計画されたもので、建築家の六角鬼丈氏に設計を依頼しました。「立山曼荼羅」の世界を造形物や音、光、香りなどの演出によって現出しようと試みたものです。
シンボルマーク・ロゴタイプについて
- 杉浦康平氏
立山博物館のシンボルマークは、グラフィックデザイナーの杉浦康平氏がデザインしました。「立山」に代表される「山の聖性」と博物館のコンセプトの中心にある「曼荼羅」の力の二つを組み合わせ、中央に「金剛界曼荼羅」を抽象化し、五仏と明妃を円相で表しています。
そこから四方に三山の山頂が出入りするカタチが霊力の強さを象徴するとともに、博物館が担う現世における役割、人々の「心」を豊かにする働きを放射するカタチに託すという意味が込められています。